菊の花が大切にしていること
子どもの育ちにとって大切なもの
ザワザワの4月、子ども達は期待と不安をかかえて幼稚園にやってきます。進級の子ども達は、新しい先生やお友だちに囲まれて様子を伺っています。新入園の子ども達は、お母さんと離れて新しい先生やお友だちと出会います。靴を履き替える、鞄を置く、出席シールを貼る、先生に挨拶する、友だちの様子を伺う、遊ぶ場所やものを見つける、泣くのさえも一生懸命!!そんな子ども達が、幼稚園で目を見張るほどに成長するのはなぜでしょう。幼稚園ではたくさんの「ひと・もの・こと」に出会います。出会った時に心が動き、自分の気持ちに気付いたり、切り替えたり、そして何よりも人の気持ちに寄り添えるようになる。幼稚園にはそんな気持ちを経験できる「ひと・もの・こと」がたくさんあるからこそ、子ども達は集団生活を通して大きく育つのです。
のりやハサミが上手く使えるようになる、跳び箱が跳べるようになるなど、幼稚園でたくさんの技術を身に付けるのは、当たり前のことだと思います。菊の花では、園で身に付けた技術、「見える力」の上に積み重ねる「見えない力」に着目しています。見えない力とは、自分で考え、工夫したり、努力したり、友だちと協力するなどの力です。その力が蓄積されているかどうかは評価しにくく、わかりにくい部分でもありますが、「目に見えない力」は幼稚園での活動を通じ、少しずつ子ども達に充電されていきます。入園から卒園までたくさんの「見えない力」を充電し、以降の学校生活での基盤づくりを行います。
目に見えない『5つの力』を育みたい
生まれてから家庭の中で家族の愛情をたっぷりもらい、思いのままに育ってきた子ども達が、幼稚園では、今までに経験したことのない人間関係の中で生活をすることになります。入園したての子ども達は家庭にいる時と変わらない思いや要求を持っています。たとえば、子どもをいろいろな要求を持つイガイガの形とするならば、このイガイガ達が1つの箱(クラス)の中であっちにぶつかり、こっちにぶつかりしながら、自分の形を変え、調節してゆきます。その調節する力を身に付けることこそが、集団生活から得られる大変貴重な賜物だと考えています。
当園では、「森のおさなご広場」という園専用の施設があります。ここは子ども達にとって、遊びの宝庫です。木の枝、葉っぱ、木の実、斜面、川の流れ、石ころ…。自らの発想次第で、さまざまな遊びが展開できます。既成遊具のない広場で、自分でいかに遊びを見つけることができるか、ということをテーマにしています。何もない広場ですので、はじめはどうやって遊ぶのか戸惑う子どももいますが、回数を重ねるごとに自然物で遊ぶことに楽しみを見つけ、友だちと考えたり、工夫したり、協力したりしながら自分で遊ぶ力=見えない力である“創意工夫する力”を育みます。
子ども達が幼稚園で身に付ける力のひとつに集中力があります。短期間で養うことのできないこの力は、在園中の積み重ねが大切です。日常の保育の中で「人の話を聞く時は、話をしている人の顔を見ましょう」といったようなことから、日々集中力を少しずつ養っていきます。思いっきり遊び、自己表現する時間と今日のテーマに沿って進める保育の中で、しっかりとけじめとメリハリをつけることを積み重ねます。それぞれの場面で集中力を養い、小学校以降の教科教育にしっかり取り組めるようにつなげます。
幼稚園ではいろんなことを経験したり、体験する機会がたくさんあります。その際、子ども達自ら「やろう!!やりたい!!やる!!」という気持ちを持てるよう、保育者がうまく導入や援助を行います。例えば、テーマに取り組む前に、それに関する絵本やお話しをしっかりしたり、興味が持てるような道具や素材を用意し、子ども達の思いがすぐ表現できるように環境を整えます。どの活動も決して強制的に「やりなさい」ということではなく、子ども達の“やる気”を引き出し、意欲を持つ力を養います。
家族と離れて生活することで、身辺の整理など基本的な生活習慣を身に付け、自らの思いや考えを自分なりに伝えることにより、自立への道筋を見出します。毎日の繰り返しの中で自然に芽生える自立心もありますが、子ども同士が交わることで自ら考え、生まれる自律心もあります。いずれも家庭から離れた集団生活の中でこそ培われます。